整形外科

整形外科の疾患

整形外科の疾患

橈尺骨骨折(とうしゃくこつこっせつ)

橈尺骨とは、前肢にある2つの骨です、特に小型犬・超小型犬などでは落下などにより最も起こりやすい骨折です。
通常は橈骨/尺骨の両方の骨折が起こることが一般的ですが、それぞれ単独での骨折が起こることもあります。
特に多い、遠位骨折(手首に近い方での骨折)では少しのズレが歩行障害につながってしまうため、適切な整復が必要です。
また、この部位は周囲の組織が少なく、血流が乏しい骨のため、他の骨折と比べても癒合不全(骨がくっつかない)が起こりやすいので、適切な治療の選択が重要です。
粉砕骨折(2つ以上の骨折)は、さらに重症になってしまうケースもあります。
この場合は、より強固な固定が必要です。

治療

基本的にはプレートにより固定をする手術を行います。
一般的なプレートに加えて、ロッキングプレートなどを利用して治療を行います。
その他、骨折の状況に応じて外固定(包帯のみ)、ピンニング、ワイヤー、スクリューで固定することもあります。

膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

膝蓋骨とは膝のお皿です。膝蓋骨は大腿骨(ももの骨)にある滑車溝という窪みの中にはまっていて膝関節のなめらかな屈伸運動に役立っています。
外傷性の場合もありますが、先天性や発育に伴って発症する場合がほとんどです。
実際には滑車溝が浅かったり、膝蓋骨に付着しているじん帯や大腿四頭筋の内外のバランスの悪さなどが原因と考えられており、進行すると骨格の変形が起こりさらに脱臼を助長します。
膝蓋骨が滑車溝から外れる状態を膝蓋骨脱臼といい、特に内側に外れる膝蓋骨内方脱臼が多く見られます。

治療

発症年齢や重症度、症状の程度・経過、体重、飼育環境など様々な事を考慮して最適な術式を選択します。
グレードが低く症状も軽度の場合は、環境・生活改善や投薬により症状を抑えたり、骨関節炎の進行を抑制することも可能です。
膝関節の機能障害は膝蓋骨が継続的に脱臼することにより、悪化してしまう可能性があるため症状のある若齢犬に関しては早期に外科的療法を行う必要があります。
また関節軟骨が摩耗している場合には痛みが慢性化し関節炎へと移行していくため外科的療法が必要です。

術式には、滑車溝形成術 / 脛骨粗面転位術 / 内側・外側支帯の開放術 / 縫縮術 / LSS(ラテラルスーチャー法) / TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術) / 大腿骨骨切り術 などがあります。

単独で恒久的に膝蓋骨の再脱臼を予防するのは困難なため、それぞれ脱臼の状態や膝の形態に応じて術式を組み合わせます。
大腿骨の骨切り術は脱臼が非常に重度な場合に実施されます。
通常の膝蓋骨脱臼においては1から4までの手技を組み合わせて、手術する動物にもっとも適する形で手術を実施する必要があります。
よく行われる縫縮や滑車溝形成術のみでは再脱臼が起こりやすくなることが、報告されております。

椎間板ヘルニア

脊椎(いわゆる背骨)の骨と骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨である椎間板に変性が起き、太い神経である脊髄の通る脊柱管内に椎間板やその内容物が飛び出てしまい、様々な神経症状を起こす病気です。
小さなヘルニアは通常健康には支障ありませんが、大きなものでは、飛び出た軟骨が神経を圧迫し、ひどい痛みを引き起こし、麻痺することもあります。

治療

発症年齢や重症度、症状の程度・経過、体重、飼育環境など様々な事を考慮して最適な術式を選択します。

頸部腹側減圧術 (ベントラルスロット)

頸部椎間板疾患において、脊柱管内に突出または脱出した椎間板物質を椎間に作成したスロットより除去し、頸髄への圧迫を取り除く治療法であります。

片側椎弓切除術

胸腰部椎間板ヘルニアで最も一般的に使用される術式であり、脊髄の片側に変位した椎間板物質の摘出に使用されます。

背側椎弓切除術

背側切除術は、脊柱管を構成する脊椎椎弓の背側部分を棘突起とともに切除する方法であります。
腰仙椎間にみられる椎間板ヘルニアや変性性脊椎症などに伴う脊柱管狭窄症など、いわゆる馬尾症候群の治療に対して使用します。